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人質売買 標的は日本人記者 「イスラム国」支持者画策か 誘拐ビジネス横行

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人質売買 標的は日本人記者 「イスラム国」支持者画策か 誘拐ビジネス横行

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報道関係者らが多数待機する中、日没間近となったトルコ南東部アクチャカレの国境検問所=2015年1月29日(共同)  フランス公共ラジオなどによると、ヨルダン軍報道官は30日、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が拘束しているヨルダン軍パイロット、モアズ・カサスベ中尉(26)の生存を確認できる証拠はまだ提示されていないと明らかにした。イスラム国は29日の日没(日本時間29日深夜)までにサジダ・リシャウィ死刑囚(ヨルダンで収監中)をトルコ国境に移送するよう求めてきたが、ヨルダン側は中尉の生存が確認できないとして日没までに出国させていない。一方、イスラム国の支持者らが人質事件を取材する日本人記者を狙った誘拐事件を画策している恐れがあることが判明。日本外務省は30日、トルコ南部で取材をしている報道各社の記者らに対し、滞在を控えるよう求める注意喚起を出した。

 ネットに書き込み

 外務省は「不測の事態に巻き込まれる可能性が高く、非常に危険」としており、事実上の取材自粛要請といえる。外務省によると、日本人記者らがトルコ南部に集結しているとの情報をイスラム国の関係者が把握し、拘束や危害を及ぼすおそれがあるとしている。

 地元トルコや日本、欧米の報道陣数十人は29日、後藤健二さん(47)解放の可能性があるとみて、シリアのイスラム国支配地域の「正面玄関」で、過去に人質交換が行われたトルコ南部のアクチャカレ国境検問所の前に集結した。

 しかし、ツイッター上では、イスラム国支持者とみられるユーザーらが検問所前で待機する日本の報道陣の写真を掲載。中には記者の顔がはっきりと判別できる写真もあり、ユーザーらからは「このうちの誰かを誘拐して、別の捕虜交換に利用しろ」といった書き込みが相次いだ。

 欧米メディアの記者たちによると、シリア北部では昨年以降、通訳やガイドを装って外国人に近づき、数万ドル(数百万円)でイスラム国に売り渡す誘拐ビジネスが横行。イスラム国が敵視する米英など欧米を中心とした記者たちが最大の標的になっている。

 後藤さんも、仲介していた同行ガイドに裏切られ、人質取引の材料となった可能性が指摘されている。29日の日本記者への脅しは、日本人も標的の一つになったことを示した形だ。

 国籍で扱い使い分け

 イスラム国は、500万ドル(約6億円)程度とされる高額の身代金のほか、欧米に屈しない姿勢を世界に誇示する政治宣伝のために誘拐を行い、その扱いは人質の国籍で使い分けている。今回は、日本とヨルダンの人質2人を使って両国の対テロ連携を引き裂く狙いがあるものとみられている。

 「国境なき記者団」(本部・パリ)は先月、昨年1年間で、イスラム国の支配地域があるシリアとイラクで計47人のジャーナリストが誘拐されたことを明らかにした。これは世界で誘拐された記者の4割に当たる数だという。

 後藤さん妻に強要

 過激派に詳しいトルコ人記者は「イスラム過激派の人たちは、外国の記者はすべてイスラム国の破壊をもくろむスパイだという基本的な認識をもっている。そのスパイを逆に利用して敵(外国)に打撃を与えるのは正当なことだと考えている」と指摘した。

 一方、後藤さんの妻は29日、「これが最後の機会になると恐れている」などと、日本とヨルダン両政府に協力を求める声明を発表。イスラム国とみられる組織から、期限までの死刑囚移送の要求を公表しなければ、「健二が次だ」と強要されていたことを明かした。(SANKEI EXPRESS

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