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【イスラム国殺害脅迫】緊迫の官邸 迫る「日没」に厳戒態勢

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【イスラム国殺害脅迫】緊迫の官邸 迫る「日没」に厳戒態勢

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邦人人質事件に関する関係閣僚会議。安倍晋三(しんぞう)首相(奥中央)や岸田文雄外相(手前右)らの表情にも疲労がにじむ=2015年1月29日午後、首相官邸(小野淳一撮影)  政府は29日、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」側が人質交換の期限に設定した「日没」を前に、後藤健二さん(47)の安否確認や早期解放に向けた作業に全力を挙げた。「テロリズムの脅威」に直面した日本政府の対応を国際社会が注視する中で、政府の緊張の度合いは高まるばかりだ。

 政府が新たな音声付き静止画像を確認したのは29日午前8時前だった。安倍晋三首相(60)を含む全閣僚が出席する衆院予算委員会の審議をわずか約1時間後に控えてのこと。首相は国会内での答弁の事前打ち合わせ中に、一報を聞いた。

 首相は直ちに菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)と岸田文雄外相(57)とともに、国会に呼んだ外務省の斎木昭隆事務次官(62)、上村(うえむら)司中東アフリカ局長から説明を受け、対応を協議した。菅、岸田両氏は野党側の同意を得て予算委の出席を免除され、早々に退席。それぞれ官邸と外務省に戻り、後藤さんの早期解放に向けて指揮を執った。

 政府対応には限界も

 だが、ヨルダンで収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚を釈放しなければ軍パイロットを殺害するとイスラム国側がヨルダン政府に迫る構図で、交渉当事国ではない日本政府の対応には限界がある。ヨルダン側から入手した情報を日本政府が公表できるはずもなく、少しでも交渉過程を漏らせば人質の安全にもかかわる。

 このため、菅氏は「事柄の内容上、事態が動いている段階で発言すべきではない」と繰り返してきた。29日午後の記者会見でも「政府関係者からいろいろ報告を受けているが、現時点で具体的な動きについて掌握していない」と述べるにとどめた。

 イスラム国が後藤さんら日本人2人の殺害を警告した20日以降、首相は公務を終えるとそのまま公邸で待機し、菅氏らは連日深夜まで官邸にとどまり、関係省庁から情勢報告を受け、対応を指示することを繰り返してきた。

 29日夕まで予算委で答弁した首相は「日没」を前に、菅氏らとともに厳戒態勢に入った。ヨルダンの現地対策本部を中心にギリギリの協力要請を重ねており、人質解放に向けた緊張感はピークに達しようとしている。

 ≪犯行グループ要求 より具体的に≫

 邦人人質事件で、「イスラム国」を名乗る犯行グループは29日、4度目となる声明を公開した。相次ぐ声明は、手の込んだ最初のビデオ声明から形式は簡素になる一方、要求や期限はより具体的になっていった。日本、ヨルダン政府に解釈の余地がないメッセージを素早く伝え、交渉を急ごうとする意図が垣間見える。

 砂漠に立つナイフを持った黒ずくめの男。人質の後藤健二さんと湯川遥菜(はるな)さん(42)の2人がひざまずく-。

 20日に公表した約1分40秒のビデオ声明は強い印象を与える舞台設定で期限は72時間、要求は2億ドル(約235億円)という法外な身代金だった。合成の疑いも出たが、警察庁の科学警察研究所(科警研)はその痕跡はないと結論付けた。

 それが24日の2度目の声明は一転。映るのは白い背景に立つ後藤さんの静止画だけで、音声は湯川さんを殺害したと主張し、身代金ではなくヨルダンで収監中の女死刑囚の釈放を求めた。

 グループがいら立ちを見せたのは27日の3度目だ。「(釈放は)難しくないだろう」。男性の静止画と音声の組み合わせは同じだが、ヨルダン政府を批判し、24時間以内に要求に応じなければ拘束中のヨルダン軍パイロットと後藤さんを殺害すると圧力を強めた。

 最新の声明は公表を急いだのか、30秒ほどで、後藤さんを名乗る男性の音声の他はメッセージがアラビア語で表示されるだけだった。だが、それまでのように起点が不明な期限ではなく「(イラク北部)モスル時間1月29日木曜日の日没」と初めて明示し、釈放を迫った。(共同/SANKEI EXPRESS

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