SankeiBiz for mobile

インドネシア景気に不透明感 通貨安・インフレ、消費への影響懸念

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

インドネシア景気に不透明感 通貨安・インフレ、消費への影響懸念

更新

 好景気が続くインドネシア経済の先行きに不透明感が漂い始めている。成長の失速要因となっている通貨ルピア安やインフレ率の上昇懸念が、これまで経済の牽引(けんいん)役だった民間消費にも影響を与えるのか。国内外から注目が集まっている。

 約3年ぶり低成長

 インドネシア中央統計局が8月初旬に発表した今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)の伸び(経済成長率)は、前年同期比で5.81%。2010年7~9月期以来の低率で、6%を割り込んだのは11四半期(2年9カ月)ぶりとなった。

 ユドヨノ政権はこれまで、2期目の任期を終える14年に7%以上の経済成長率達成を目標に掲げていたが、6%の達成も厳しい状況だ。

 昨年あたりから、最大の輸出先である中国を含む世界経済の低迷で資源を中心とした輸出が伸び悩む一方、国内消費の拡大で工業製品やエネルギーの輸入は増加の一途をたどり、貿易赤字の拡大が定着。ルピアは対ドルでじわじわと値を下げてきた。

 追い打ちをかけるように、5月下旬にバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長が金融緩和縮小を示唆する発言をしたことが、他の新興国と同様に金融市場の混乱を招いた。ルピアは7月中旬、ほぼ4年ぶりに1ドル=1万ルピアの大台に突入。6月下旬には、政府が管理する補助金付き燃料価格の値上げに踏み切ったことで、物価上昇圧力が一段と高まっている。

 値上げによる補助金削減は、財政負担軽減を目指す政府の長年の懸案だったため、長期的には健全な財政構造の実現にプラスに働くと考えられているが、短期的にはインフレを誘発するため、景気減退を招くとの懸念は根強い。

 8月初めに発表された7月のインフレ率は、前月比で3%を超え、前年同月比では中央銀行の予測を上回る8.61%を記録。同様に石油燃料を値上げした直後の05年10月以来の高水準となった。インドネシアでは、7~8月にかけ、年間で最も消費が活発になる断食月(ラマダン)を迎えたため、季節的要因も上昇を押し上げた。そのため、政府と中銀が8月以降のインフレ率をいかに抑え込めるかが一つの大きな鍵となる。

 経済構造の転換急ぐ

 インドネシアでは、6%の成長率が失業者の増減の分かれ目とされており、直近で6%を切ったことで今後は失業率上昇が懸念される。これまでの成長は貿易赤字を拡大させる内需頼みだったため、政府と中銀は産業競争力を付けることで、赤字縮小と高成長を両立させる経済構造への転換を急いでいる。

 ただ、「補助金付き燃料価格の引き上げの影響が本格化した7月を含む第3四半期(7~9月期)に入る前に、目標より低い成長率の値が公表されたことは、先行きの不安定さを印象付けた」(日系金融機関幹部)との見方があるように、不透明感を払拭するのは容易でない。

 大統領選挙を来年に控え、保護主義的な経済政策への誘惑が高まるなか、ユドヨノ政権がどれだけ有効な政策を打ち出すことができるかも注視する必要がある。(インドネシア邦字紙「じゃかるた新聞」編集長 上野太郎)

ランキング