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高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定 原発再稼働、国民理解の試金石

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定 原発再稼働、国民理解の試金石

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 政府は高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定を主導することで、夏以降に控えた原発の再稼働に向けて国民の理解を得たい考えだ。長年の懸案だった処分地問題が前進すれば、15年後のエネルギーミックス(電源構成比率)に盛り込んだ原発の“再興”にも大きな弾みがつく。ただ、地元住民の説得が極めて難しい状況に変わりはなく、政府の実現力が問われそうだ。

 「現世代の責任として国民理解を得ながら着実に進める」。宮沢洋一経済産業相は22日の会見で、最終処分地の選定へ積極的に取り組む姿勢を強調した。

 政府は2000年、最終処分に関する法律を施行し、高レベル放射性廃棄物は地下300メートルより深く埋める方針を決定した。電力会社が中心となって原子力発電環境整備機構を設立し、14年から全国の市町村に候補地を公募してきた。

 だが、安全性への懸念などから最終処分場の候補地は見つからず、原発は「トイレのないマンション」と揶揄(やゆ)されるようになった。国内の使用済み燃料は原発のプールなどに約1万7000トンが貯蔵され、最短3年で貯蔵しきれなくなる原発もある。

 政府が有望地の科学的根拠を示す新方式は、候補地の首長が住民に大きな説明責任を負う従来に比べ自治体の負担を軽減できる。とはいえ、最終処分地の選定は世界中で難航しており、決まったのは北欧のフィンランドとスウェーデンのみ。国が前面に出ても流れが変わる保証はない。

 政府が決めた30年度の電源構成では、現状で全基停止している原発の比率を20~22%まで回復させる方針。実現には着実な再稼働に加え、原則40年と定められた運転期間の延長も必要。中長期的な原発の利用継続に国民の理解を得られるか、最終処分地の選定はその試金石となりそうだ。(田辺裕晶)

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