5年前に誕生したバーチャル(仮想)アイドル「初音(はつね)ミク」が、リアル(現実)の世界で一大ビジネスに成長している。「ミク」は、歌声を合成するパソコン用音楽ソフトとそのイメージキャラクター。ファンが動画サイトに投稿した作品は数万本に上り、人気曲はCDやカラオケでもヒット。トヨタ自動車や米グーグルといった世界的企業がCMに起用するまでになった。関連消費額はすでに100億円を超えたとみられており、近く英語版ソフトの発売なども予定され、ビジネスチャンスは広がる一方だ。アマチュア作品が支える新しいコンテンツビジネスが大きく羽ばたこうとしている。
音楽ツールの枠超越
「ミクさんキター!」
青い髪をなびかせ、ステージに浮かび上がった少女の姿に、ファンが大歓声を上げた。「ミク」の名にちなみ、3月9日まで2日間、東京ドームシティで開かれたライブイベントは、4回公演がすべて満席となった。
合成された不思議な歌声がホールに響き、ステージ上に投影されたミクの3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)が、まるで実在のアイドルのように滑らかなパフォーマンスを披露。“電子の歌姫”に計1万人の来場者が拍手を送り、動画サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴが生中継した有料ネット配信には12万以上のアクセスが集まった。