エンジニアにとって議論は相手との「間」の取り方が重要だ【拡大】
□エレクトリフィケーションコンサルティング代表・和田憲一郎
いきなり物騒なタイトルで恐縮だが、いろいろな企業のコンサルタントを行っていると、覇気のあるエンジニアが少ないなと思うことがある。どちらかというと、おとなしく、真面目という感じだ。そこで少し不安を覚えたことについて述べたい。
エンジニアであれば、相手に対して説明したり、同意を得るために説得したりする場面が数多くある。こちらからある案件に対して説明する場合でも、日本ではあからさまに反対論を述べるのではなく、遠回しな表現にとどめたり、はっきりとした意見を言わない場合が多い。また上位の責任者が何か言うまで待ちの姿勢を決め込んでいる人もいる。というのは、日本での議論では、反対すると根に持たれたり、反対派だからとレッテルを張られたなど、旗色を鮮明にすることで不利益を被ることがあるからだ。
◆信頼築き要所で主張
一方、欧米(最近はアジアもそうであるが)で会議を開くと、黙っているのが損だと言わんばかりに、論理的に、時には論理性もなく思ったことをガンガン言ってくる。このため、黙っていると、そのまま決められてしまうことから反論しなければならない。しかし、これがけっこうタフな仕事となる。なぜなら、彼らはディベートなどで鍛えられたせいもあるためか、論理的展開が実にうまい。またわれわれは慣れていないため批判されると、ついつい感情的になりがちである。
では、どうすればよいか。筆者が米国での車両開発十数年に及んだ経験から見つけた答えの一つが、相手とは信頼関係を作った上で、主張すべきところは主張するというやり方だ。まさに「右手で握手しながら、左手でハンマーを持ち殴り合う」という感覚である。この「右手で握手しながら」というのがミソで、信頼関係が構築できていれば、感情的にならずに、例えば良い商品作りのために、主張すべきところは主張することができる。