記者会見する日銀の黒田東彦総裁=4日午後、日銀本店(大西史朗撮影)【拡大】
日銀が来年1月にも追加の金融緩和に踏み切るのではないかとの観測が市場で浮上してきた。消費税増税後に落ち込んだ景気の回復が遅れ、7~9月から盛り返すとの政府・日銀のシナリオに狂いが見え始めたためだ。
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は追加緩和を「来年1月がメーンシナリオ」と予想。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストも同じ見立てだ。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストも「物価上昇率2%の達成が危うくなればやる」と、来年1~3月を想定する。
日銀は金融緩和策について、国債などを大量に買い入れて世の中に出回るお金の量を2年間で倍増させ、平成26年末に270兆円とする目標を示している。だが、27年以降の緩和については、具体的な国債の買い入れ額などを示していない。このため、多くのエコノミストは追加緩和を打ち出しやすいタイミングを「年明け」とみる。
今後は、来年10月の消費税率の再引き上げの可否を年末に判断する際の景気の下支え策として、追加緩和への期待が高まる見通し。すでに安倍晋三首相のブレーンの本田悦朗内閣官房参与が「再増税の場合、追加緩和が必要になる可能性がある」と指摘しており、一部には、日銀が新たな「経済・物価情勢の展望」を公表する10月の追加緩和を予想する声もある。
ただ、追加緩和の手段は限られるとみられ、「(緩和策が)想定の範囲内であれば、大きな効果は見込めない」(野村証券の木下智夫チーフエコノミスト)との厳しい見方もある。