タカタ製エアバッグの欠陥問題で、自動車メーカーが自主的にリコール(回収・無償修理)の地域拡大や、予防的なリコールに踏み切る動きが目立ち始めた。タカタの対応が後手に回り、このままでは“日本車たたき”に発展しかねないとの危機感が背景にある。原因究明に向けたメーカーの合同調査には国内大手の大半が参加する見通しで、業界一丸で信頼回復に動く。(田村龍彦)
マツダは4日、米国のリコール対象地域を拡大した。理由について「原因は特定できていないが、安全のためリコールに踏み切った」と説明する。一般的なリコールの場合、メーカーは不具合の原因が特定されたものを監督当局に届け出る。ただ米国では原因が分からなくても、調査を目的にメーカーが特定の地域で行う「調査リコール」が認められている。
ホンダが米国で行ったタカタ製エアバッグのリコールは約685万台。うち、調査リコールは310万台に上る。3日の米下院公聴会で「顧客が懸念を抱いている」として、全米への拡大を表明したのも調査リコールだ。優先度の高い地域から順に実施できるなど、柔軟性がある。
日本に調査リコールの制度はないが、トヨタ自動車は4日、エアバッグが破裂する恐れがあるとして「カローラ」など約18万台のリコールを国土交通省に届け出た。原因調査が目的で、あくまで「予防的措置」として実施した。こうしたリコールは国内で初という。ホンダなど他社も同様の措置をとる見通しだ。
米国では議会や米道路交通安全局(NHTSA)がタカタに全米リコールを実施するよう求めている。ただ、自動車メーカーではない部品メーカーにリコールを要求するのは異例で、タカタも「自動車メーカーのリコールに協力する」との回答に終始した。この姿勢が消極的と受け止められ、批判に拍車をかけた。
このままタカタに任せていては「日本車全体のイメージダウンにつながる」として、自動車メーカーは“火消し”に動き出した。すでにトヨタはエアバッグの欠陥について第三者機関の調査を提案。ホンダや日産自動車、マツダ、富士重工業、三菱自動車も参加する方針を示している。
北米は多くの国内メーカーにとって主力市場だ。各社とも「早く沈静化して、影響を最小限にとどめたい」考えだ。