創業家父娘が激しい委任状争奪戦を繰り広げた大塚家具の27日の株主総会は、長女である大塚久美子社長を取締役に選び、父親で創業者の勝久氏の「追放」でひとまず決着した。だが、顧客不在の不毛な争いで企業イメージは毀損(きそん)。今後、勝久氏が筆頭株主として株主提案などで対抗し、対決が泥沼化して顧客離れが加速する恐れもある。今回の騒動は同族企業の後継者へのバトンタッチが難しさを浮き彫りにした。
「こんな騒動があってはならない。企業価値が壊れるだけだ」「一族の醜態だ。会社は一族のものではない」。
この日の総会は一般の株主からこうした厳しい声が相次いだ。
ただ、両者の争いは今後も続く見通しだ。勝久氏は久美子社長が支配する資産管理会社をめぐって民事訴訟を起こしており、父娘の対立は法廷でも行われる。
また、勝久氏は総会前の産経新聞の単独インタビューで「今回負けても、次の総会で株主提案をしていく」と明言。一方、久美子氏は「(株主)安定化のための施策をとる」と、勝久氏の持ち株比率を下げるため第三者割当増資などを打ち出す構えをみせる。
しかし、争いの長期化は企業イメージを悪化させ、既存店売上高のマイナスが続く苦境を、さらにひどくしかねない。また、増資は株を希薄化させ、既存株主の利益を損なう。
SMBCフレンド調査センターの田中俊上席主任研究員は「今回の大塚家具の問題は、創業者トップからの後継者への事業継承が難しいことを改めて示した」と指摘する。
流通業界関係者も「創業者はゼロから会社を作り上げた自負がある。後継者の仕事が思い通りでないと、自分が乗り出したくなる」と話す。とくに創業者は大株主でもあるため、発言力は強い。
大手上場企業ではファーストリテイリングで17年、3年前に就任したばかりの玉塚元一社長(現ローソン社長)を創業者の柳井正会長が事実上解任したことが話題になった。
25年に不適切な会計処理が発覚した雪国まいたけは創業者、大平喜信社長が辞任したものの、大株主として株主総会でイオン出身の社長を解任するなど関与を強化。反発した経営陣と銀行団の要請を受けた米投資ファンドが、雪国まいたけ株のTOB(株式公開買い付け)を始める異例の事態に発展した。
大塚久美子氏は総会後の会見で「信頼回復のため、誠心誠意、お客さまに尽くす」と述べた。
同族企業の経営に詳しい神戸大大学院の三品和広教授は「最終的には創業者がいかに身を引くか、後継者を親族や社員にこだわらず、いかに育成するかが問われている」と話している。
混乱を早期に収拾し、事業継承の「成功例」となれるか。久美子社長ら経営陣に注ぐ株主や顧客などステークホルダーの視線は一段と厳しくなっている。