産業技術総合研究所が開発中のセルロースナノファイバーを添加したスポーツシューズと靴底=1月、東京ビッグサイト【拡大】
【世界へ 日本テクノロジー】
鉄の5分の1の重さで5倍の強度を持つとされる植物繊維由来の新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」の実用化に向けた動きが加速している。産業創出に加え林業を活性化する波及効果が見込めるため政府も開発を後押ししており、スポーツ用品メーカーをはじめ関連企業は炭素繊維強化樹脂に代わる夢の素材として新市場創出に意欲を見せている。
「1グラムでも軽く」
「軽くて強靱(きょうじん)」な性質を使い、スポーツシューズの靴底軽量化に取り組んでいるのは、産業技術総合研究所(産総研)。開発に関わる企画主幹、岩本伸一朗さんは「アドバイザーのアシックスなどからは『1グラムでも軽くしたいというのが長距離選手の希望だ』と聞いています」と話す。試作品では、同じ性能を通常の靴底より10%軽くできたという。目標は2020年東京五輪で日本選手に履いてもらうことだという。
産総研では、素材そのものの性質分析、加工法、用途開発など多面的に取り組み、研究を主導している。CNFは親水性が高く、疎水性のプラスチックとの相性があまりよくなく、いかに均一に分散させるかなど研究課題は多い。しかし、同じプラスチック強化素材として先行する炭素繊維は型に骨組み用の繊維を敷き詰めてからプラスチックを流し込むという作業が必要なのに対し、CNFはプラスチックに数%混ぜて通常の射出成型機で加工でき、既存の設備をそのまま使えるメリットもあるという。