業務用冷凍・空調機器の所有者(管理者)にフロンの漏洩(ろうえい)防止・廃棄時の回収などを義務づける「フロン排出抑制法」が施行されて間もなく1年。フロン充填(じゅうてん)・回収業者は管理者を囲い込むため、説明会の開催や対応商品の売り込みなどに注力。しかし管理者は地球温暖化防止のためという法の趣旨に理解を示しても、事前周知の遅れなどから予算も体制も整わず普及までには至らなかった。顧客獲得競争は来年度に持ち越された格好だ。
◆20年には排出量2倍
フロン排出抑制法が施行されたのは2015年4月。それまでの「フロン回収・破壊法」は、業務用冷凍・空調機器の廃棄時にフロンの回収・破壊を義務付けた。対象も回収業者、破壊業者だった。しかしフロンの回収率が3割程度にとどまり、機器の整備不良や経年劣化などで使用中にフロンが機器本体や配管から漏洩していることが判明。
また、このまま追加対策を取らなければ20年のフロン排出量は現在の2倍になるとの危機感から法改正。これに伴い、管理者にはフロン漏洩防止に向け点検と記録の保管、国への報告が義務付けられた。
しかし運用の手引きなどを入手できたのは3月に入ってからと遅く、人員など体制を整えられず、来年度予算への計上もかなわなかった。
充填・回収業者も準備不足に悩まされた。三菱電機ビルテクノサービス(東京都荒川区)の新村拓也ファシリティ事業本部部長代理は「ちょうど昨年の今頃、準備や顧客への通知で慌ただしかった」と振り返る。ダイキンエアテクノ(同墨田区)も「法律の詳細を知ったのは2月。それから勉強会を開いて対策を決め、顧客への告知を始めた。説明会を開催できたのは6月から」(エンジニアリング本部の熊谷空美さん)という。