企業が従業員の健康管理に積極的に関わる経営手法「健康経営」が広がりを見せている。病気による従業員の長期欠勤を防ぎ、働く意欲を引き出すことで企業の生産性を高めるのが狙い。自治体や関連業界の間にも、こうした企業の取り組みを後押しする動きが活発化しており、普及が加速しそうだ。
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「従業員の健康管理に積極的に投資することで、生産性の向上、そして質の高い輸送サービスの実現につながる」
東京急行電鉄労務厚生部の下田雄一郎労政課長は健康経営の意義をこう強調する。
同社は健康経営の司令塔として2月1日付で最高健康責任者(CHO)職を新設し、人事や労務を担当する巴政雄専務執行役員が就任。同時に健康の重要性を示す「健康宣言」を制定した。生活習慣病の予防を目的に職場単位で減量を競い合う「体重コントロール」や、ウオーキングイベントを開いたり、系列病院である東急病院(東京都大田区)の管理栄養士による栄養指導、間食の適切な時間帯や量などについて助言など、職場一丸で健康管理に取り組んでいる。
鉄道業界は保線などの現業分野を中心に勤務時間が不規則な職場が多い。東急では2015年1月、グループの東急バスの運転手が運転中に一瞬気を失ったのが原因で、電柱と衝突し19人がけがをする事故が起きるなど、従業員のコンディションの維持が切実な課題だ。健康経営は「乗客の命を預かる鉄道会社にとって、福利厚生としてではなく、企業価値の源泉」(下田課長)というわけだ。