三菱重工、大型客船から撤退 収益改善見込めず 「取り組むべきでない」 (1/2ページ)

記者会見する三菱重工業の宮永俊一社長=18日、東京都港区
記者会見する三菱重工業の宮永俊一社長=18日、東京都港区【拡大】

  • 三菱重工の造船事業改革のポイント
  • 大型客船事業から撤退する三菱重工業の長崎造船所=長崎県長崎市

 三菱重工業は18日、多額の損失を出した大型客船の建造から、事実上撤退する方針を明らかにした。今後は貨客船や中小型客船に限定して受注する。

 東京都内で記者会見した宮永俊一社長は大型客船について「事業構造や環境に大きな変化がない限り、今後取り組むべきではない」と強調した。また商船事業については、設計などを手掛ける部門の分社化も検討し、提携協議中の今治造船(愛媛県今治市)、大島造船所(長崎県西海市)、名村造船所(大阪市)の3社と基本設計などの分野で連携を強化していく方針も示した。提携協議は2016年度中に結論を出す考えだ。

 「少しでも世界最高級の技術を残し、何とかやっていけないかという思いだ」。宮永社長は会見で、「意思決定上、いろいろと不十分な点があり、深く反省すべきだ」とする一方、「祖業」でもある造船事業の存続に向けた思いをこう述べた。

 だが、目標とする「安定的な黒字」への道のりは険しい。同社はもともと、造船事業の採算悪化を打開しようと、建造が難しく、収益性の高い客船に目を向けた経緯がある。撤退すれば今後の収益改善の有力手段の一つを失うことになる。旅客と貨物を同時に運べる貨客船など有望分野は他にもあるが、客船ほどの効果は見込みにくい。

日本の造船受注量は昨年、リーマン・ショック後では最高となったが…