JR貨物と豊田通商が今年度内にも、タイの鉄道貨物輸送事業への参入を決定することが3日、分かった。近く国際協力機構(JICA)を中心とした事業調査を終える見通しで、その結果も踏まえ収益効果の高い路線で事業を始める。タイで拡大する物流需要に日本の鉄道貨物ノウハウを売り込む。
事業参入の正式決定後、両社がタイ国鉄と共同出資で事業会社を設立する。出資比率は今後詰めるが、タイ側の資本が限られていることもあり、タイ国鉄側が所有する既存路線や貨物車両を提供する形での出資も検討されている。
事業調査は昨年11月から実施し最終段階に入っている。候補となる路線については、首都バンコクから(1)カンボジア国境付近のアランヤプラテートに向かう東路線(2)高速鉄道の整備計画があるチェンマイまでの北路線(3)プランテーションが盛んなチュンポン方面の南路線-などが有力視されており、定期顧客が見込めるかなど収益性を検討し、年度内にも結論を得る。
経済成長に伴い物流需要が増加するタイでは、貨物輸送手段はトラックなどの陸上輸送が約8割を占めるが、近年はドライバー不足もあって物流コストが上昇し、成長の阻害要因に浮上している。タイには鉄道貨物輸送に使える約4000キロの在来線があるものの、これまでは十分に活用されていなかった。
タイ政府は、トラック輸送を鉄道で代替する「モーダルシフト」を物流政策に掲げ、貨物輸送における鉄道比率を引き上げることを目指しており、設立される事業会社を通じ、ダイヤ管理や効率的な車両活用といった日本の鉄道貨物のノウハウを吸収することにも期待を寄せている。