芦沢さんは、この記事を読んで次のように語る。
「ちょっと大げさに言えば、ウンニさんが、医師として非常事態に立ち向かっていたことと、僕がアーキテクトとして石巻の状況に立ち向かおうと考えたことがリンクしたのかなと思います」
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「震災後、呆然とするしかないような状況を前にして、それでも一つずつそこにいる人たちが何かを作っていく、環境を変えていくしかないという状況から石巻工房がうまれたわけですが、何か彼が医師として治療していくだけでは物事が動いていかない、もどかしさみたいなものを感じていたのかなとも思いました」
4年前の記事タイトル、そのものではないか。およそ10年前の「実践は何事にも勝る 一歩外に踏み出す勇気」は、芦沢さん自身の殻をやぶるための一歩だった。
2011年の一歩は無我夢中だった。結果、震災後の石巻に一つの灯りをともすだけでなく、このプロジェクトはさまざまな地域の参考にもなった。それが今、厳しい環境で働く医師の活動へのヒントになるかもしれない、との可能性が示されている。
最初の一歩が大切である、と誰でも頭では分かっている。最初の一歩は、どうせなら身体の動きを伴うのがいい、とも知っている。だが、多くの人は、なかなかその一歩を前に出せない。
だからこそ、一歩踏み出した後の影響は大きいのだ。(安西洋之)
【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)
上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『デザインの次に来るもの』『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。