三菱重、長崎でフェリー建造再開へ 物流危機で需要増加

 三菱重工業が2020年度をめどに長崎造船所(長崎市)でフェリーの建造を再開する方針を固めたことが6日、分かった。陸運業界では人手不足による物流危機が深刻で、海上を使うフェリーの需要が高まっているため。

 フェリーの建造拠点を既存の下関造船所(山口県下関市)に加えて整え、苦戦する造船事業を立て直す。

 担当の大倉浩治執行役員(59)は共同通信のインタビューで、フェリーについて「韓国勢や中国勢と競合しない分野だ」と述べ、三菱重工の強みが発揮できると強調した。フェリーは人と貨物を同時に運ぶ船で、客室の内装工事などに技術力が求められるため価格競争に陥りにくく、今後、受注活動を強化する考えだ。

 長崎造船所は三菱重工発祥の地で、明治政府から借り受けて事業を始めてから130年以上の歴史を持つ。フェリーなどの建造は12年に中断し、受注が膨らんだ液化天然ガス(LNG)船などに特化してきたが、19年度には抱えている受注の大部分が一掃するため、操業率が低下する見込みだった。

 建造再開に向け、商船に関わる約900人の従業員の一部を再教育する。客室の内装や配線の工事など、フェリーの建造に求められる技能を身に付けさせる。

 一方、タンカーやコンテナ船など価格競争が激しい分野は、自社で設計や開発を中心に担い、建造は提携する今治造船(愛媛県今治市)、名村造船所(大阪市)、大島造船所(長崎県西海市)に任せる。大倉氏は「得意分野を生かし、環境変化にスピード感を持って対応する」と語った。