キリン、売上高でアサヒに抜かれ3位転落 海外M&Aの“巧拙”で明暗 (1/3ページ)

アサヒグループホールディングスが買収したチェコの工場。高いシェアで高収益を見込める
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 2017年12月期の連結売上高で、キリンホールディングス(HD)が、07年に持ち株会社化して以来初めてアサヒグループホールディングスに抜かれ、業界3位に転落する見通しとなった。「スーパードライ」の躍進によりアサヒにビールシェアで首位の座を奪われ、19年連続で2位に甘んじてきたキリン。長年、「一番搾り」や「ラガー」を愛飲してきたキリンファンや社員にはショッキングだが、海外M&A(企業の合併・買収)戦略の違いが売上高での明暗を分けた。

 「(売上高の)順位は気にしていない…」

 キリンが17年12月期の売上高予想を下方修正し、大手ビールの売り上げ規模でサントリー、アサヒに次ぐ3位になることが確実となった8月初旬。財務戦略などを担当する伊藤彰浩最高財務責任者(CFO)は6月中間決算の記者会見で冷静さを装いながらも、その口調には悔しさがにじんでいた。

 高い授業料

 キリンの17年12月期の売上高は5.1%減の1兆9700億円、最終利益は1.6%増の1200億円と減収増益を計画する。売上高でアサヒを下回る一方、実は最終利益は過去最高益となる。

 キリンが「減収」となるのは、赤字が続いていたブラジル子会社に見切りを付け、5月末に売却したからだ。この売却により、17年12月期の売上高で800億円のマイナス要因となる。ただ、採算は大幅に改善するため、利益面が押し上げられるのだ。

一方、アサヒは海外M&Aに成功