北海道厚岸町に新設された蒸留所がウイスキーを初出荷した。2月末に約1万本の全国販売が始まり、既に品薄状態だ。小規模設備で造られた各地の「クラフトウイスキー」が話題となる中、原料の大麦や熟成用のたるを厚岸町産でまかなう構想もあり、地域活性化に期待が膨らむ。
英産地に似た気候
食品原料や酒類の輸出入を手掛ける堅展実業(東京)が建設した「厚岸蒸溜所」は、2016年11月に本格稼働した。立崎勝幸所長(50)は「ウイスキー造りで、厚岸は願ってもない場所」と話す。太平洋に面して夏に霧が発生しやすく、気温も冷涼。英国スコットランドのウイスキー産地、アイラ島の気候に似ているという。
同社によると、00年代後半から国産ウイスキーの人気が高まり、まとまった量を仕入れることが難しくなった。独自生産を模索し、気候に加えて水が清らかなことから厚岸町を建設地とした。
白い外壁の蒸留棟にはスコットランドから取り寄せた「ポットスチル」と呼ばれる高さ約5メートルの蒸留器、麦汁を作る仕込み釜が並び、香ばしい麦の香りが漂う。
初商品の「厚岸NEW BORN(ニューボーン)」は「かんきつ類やバニラのような香りを楽しめる」と立崎所長。ピート(泥炭)で薫製のような香りを付けた商品も今年8月に販売予定だ。