【埼玉発 輝く】ベンチャーウイスキー 廃棄予定の原酒抱え起業 味と技術に評価 (4/4ページ)

 --ウイスキー造りの魅力は

 「どこの蒸留所も同じように造っているのに、みんな味わいが違う。違いを楽しむ魅力があり、飽きない。テイスティングで、数年前までは首をかしげていた原酒の表情が変わっていくのが分かる。原酒が育っていく様子を追いかけられる」

 --創業時の苦労は

 「昼はウイスキー造り、夜はバー巡り、その間に起業のための書類作り。『このハードルを越えれば、ウイスキー造りができる』と思うと、つらくはなく楽しかった。行きつけのバーに行って『いまは受け継いだ原酒を売っているだけだが、いずれ自分で蒸留所を立ち上げる』と夢を語っては、バーテンダーに『応援しますよ』と言ってもらった。初めは五分五分かと思っていたが、若い男女が目をキラキラさせながらウイスキーを飲み比べている現場を見ると、うまくいくと思えてきた」

 --今後の目標は

 「秩父の素材だけでウイスキーを造りたい。地元の農家に頼んで作ってもらった大麦を使ったウイスキーを出す。年内には地元のミズナラを使ったたるに入れられると思う」

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【プロフィル】肥土伊知郎

 あくと・いちろう 東京農大醸造学科卒。サントリー(現・サントリー酒類)に入社。退社後、実家の酒造会社手伝いを経て、2004年にベンチャーウイスキーを起業。52歳。埼玉県出身。

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イチローズ モルト&グレーン ホワイトラベル(池田証志撮影)

イチローズ モルト&グレーン ホワイトラベル(池田証志撮影)

 ≪イチ押し!≫絶品ブレンドのホワイトラベル

 ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所が生み出すウイスキーは大手メーカーと違って少量のため、どの銘柄も需給が逼迫(ひっぱく)。プレミアムがついてインターネットなどで取引されるほどだ。その中で比較的手に入れやすいのが、「イチローズ モルト&グレーン ホワイトラベル」。軽やかで艶のあるフルーティーな香りが特徴。ミントやかんきつ系の味わいを楽しむことができ、時間とともにコクのある甘さも感じられるという。

 秩父特有の気候の下で熟成された原酒には、シングルカスクに適したものだけでなく、ブレンドで使ってこそおいしさを引き出せるものもある。「ホワイトラベル」は、ブレンドで力を発揮する原酒を中心に、個性豊かなモルトやグレーン原酒をバランス良くブレンドした逸品。百貨店などで販売。アルコール分46%。容量700ミリリットル。3500円(税別)。