【特許ウォーズ~チーム山中の奮闘】(2)
平成23年1月。大雪となった京都市内で、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授(49)らは4人の米国人と顔を合わせていた。
相手は米バイオ企業、アイピエリアンの幹部と弁護士。一般にはなじみのない企業だが、一部の研究者の間では知られていた。というのも、米ア社は人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製技術の一部について英国で京大よりも先に特許を取得。京大は特許をめぐり係争になるかもしれないという壁にぶつかっていた。
米ア社側の来日にあわせ京大は山中教授のほか、法律の専門家などからなる交渉団を編成。両者の交渉は3日間に及んだ。
実は交渉の1カ月前、山中教授の元に米ア社の社長から『係争回避のため当社の特許を譲渡します』という内容の電子メールが届いていた。このため、交渉では米ア社が京大に特許を譲渡し、そして京大の特許を使用できるという契約について「(契約書の)骨子を詰めることが主な内容だった」(京大関係者)。