
福島第1原発事故を巡る初公判が開かれた東京地裁の法廷=30日午前(酒巻俊介撮影)【拡大】
平成21年の制度導入以降、強制起訴された被告は9件13人に上る。東京電力旧経営陣3人を除く8件10人の判決は既に確定しているが、有罪となったのは2件2人にとどまる。
東電旧経営陣と同様に過失が争われたケースとしては、兵庫県明石市の歩道橋事故で県警明石署の元副署長が業務上過失致死傷罪に問われたが、時効成立を認め、裁判を打ち切る「免訴」判決が最高裁で確定。同県尼崎市のJR福知山線脱線事故で同罪に問われたJR西日本の歴代3社長も6月、起訴から7年を経て無罪が確定した。
強制起訴の有罪率が低い理由は、有罪が高度に見込める場合のみ起訴する検察官に対し、国民から選ばれた審査員で構成する検察審査会は「法廷で白黒つけるべきだ」「真相解明には公判が必要だ」と考える傾向にあるためだ。
司法制度改革に携わった国学院大法科大学院の四宮啓教授は強制起訴制度の趣旨を「これまで検察が独占していた起訴の判断に、国民の意見を取り入れようとするもの」と説明する。
相次ぐ無罪や免訴にも「公開の法廷の場に国民の知らなかった事実が示され、遺族などが関係者の生の言葉を聞くことができる重要な機会にもなる」と指摘。一方、「被告の地位に置かれることは確かに負担。指定弁護士が証拠を事前に全面的に開示して審理を迅速に進めるなど、関係者にはより公正な裁判のための努力が必要だ」と話している。