【高論卓説】日本のリサイクル・リユース技術 得意とする土俵でモノの価値向上 (2/2ページ)

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 日産と住友商事が出資するフォーアールエナジー(横浜市)は、福島県浪江町に専用工場を建設した。同工場に回収して集めたリーフの電池パックを独自開発の検査機器により性能をチェック。劣化したモジュールを、安定した状態のモジュールに交換し、電池パックを再生させる。再生された電池パックの価格は、新品のほぼ半値の30万円(このほか、ディーラーでの工賃が約4万円)に抑える。

 「モジュールを1つ交換するだけで、新車とほぼ同等の性能をEVは発揮できる」(日産の矢島和男・日本戦略企画本部本部長)。性能の劣るモジュールはフォークリフト用などに再利用する。また、ラミネート型以外の車載用電池の再生も可能だが当面はリーフ用に特化していく。

 サントリーホールディングスとペットボトルリサイクルを手掛ける協栄産業(栃木県小山市)が、使用済みペットボトルを新たなペットボトルに再生するメカニカルリサイクルを日本で初めて実用化させたのは11年。再生ボトルは現在、サントリーやキリンなどの清涼飲料に使われている。今年3月、サントリーと協栄は、イタリアの樹脂成形機メーカーSIPA、オーストリアの設備メーカーEREMAを巻き込み、「F(フレーク) to P(プリフォーム)ダイレクトリサイクル技術」を共同開発した。工程数を大幅に減らし、コストダウンと同時に製造時のCO2排出量を従来よりも約25%削減させたのだ。オープンイノベーションによる成果だった。

 巨額の投資競争だけがビジネスではない。自分たちが得意とする土俵を見失わなければ、活路は開けていく。

【プロフィル】永井隆

 ながい・たかし ジャーナリスト。明大卒。東京タイムズ記者を経て1992年からフリー。著書は『アサヒビール 30年目の逆襲』『サントリー対キリン』など多数。60歳。群馬県出身。