なぜ不祥事で現場は出てこないのか 「自分事化」で企業の謝罪会見が変わる? (4/4ページ)

検査データに不適切な書き換えがあったとして開いた記者会見で頭を下げる、油圧機器大手「KYB」の中島康輔社長(右)=16日午後、東京・霞が関の国交省(松本健吾撮影)
検査データに不適切な書き換えがあったとして開いた記者会見で頭を下げる、油圧機器大手「KYB」の中島康輔社長(右)=16日午後、東京・霞が関の国交省(松本健吾撮影)【拡大】

 「やべぇ、オレが今やっている不正もバレたらあそこに出てるのはオレだ……。明日、会社に行ったらこの不正をやめるよう部長に進言しよう。テレビで全国的に顔を晒されたら、息子が学校でいじめられてしまう……」なんてことになるかもしれない。

 謝罪会見の一つの目的は、「改善」をこれからはすることにある。そしてたまたま不祥事が明らかになった企業は他社の改善のためのスケープゴートになっている面もあるので、より効果を高めるには上層部だけでなく現場の社員も出る、という空気を作った方がいいかもしれない。

 「最近の若者は上昇志向がない」なんて批判する向きもあるが、「エラくなっても謝罪会見の時に出てくるだけでしょ? そんなの出たくないので出世はしたくない」なんて考えが蔓延しては社会全体にとっても損である。

【プロフィル】中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)ネットニュース編集者
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。

【ニッポンの謝罪道】はネットニュース編集者の中川淳一郎さんが、話題を呼んだ謝罪会見や企業の謝罪文などを「日本の謝罪道」に基づき評論するコラムです。更新は原則第4水曜日。

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