政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)で、民間議員が提案した解雇規制の緩和が議論を呼んでいる。企業経営者らは正社員の解雇をしやすくすれば不採算部門からの撤退が容易になり、競争力向上につながると期待しているのに対し、専門家の間には「不当なクビ切りが横行しかねない」との慎重意見も強い。安倍政権は、従来の雇用維持重視から労働移動を促進する姿勢に転じているものの、6月に策定する成長戦略で具体的な緩和方針を打ち出せるかは不透明だ。
ルールの明確化訴え
3月15日、首相官邸で開かれた産業競争力会議に経済同友会の長谷川閑史代表幹事(武田薬品工業社長)が「人材力強化・雇用制度改革について」と題した資料を提出した。
7ページに及ぶ資料では、大企業の「人材の過剰在庫」を指摘し、事業環境の急激な変化に対応するため、労働移動を促す制度の必要性を強調。その一環として、「解雇自由の原則を労働契約法に明記し、解雇の際に労働者にどういう配慮をすべきかという規定を設けるべきだ」と解雇ルールの明確化を訴えた。