「西郷隆盛の首を発見した男」【拡大】
元藩士を通じ描く激動期
西郷の首という衝撃的な言葉で読者の興味をそそる本書の主役は、千田登文(せんだ・のりふみ)という加賀藩の元藩士である。
千田は、江戸末期の弘化4(1847)年に金沢で生まれ、昭和4年に81年の生涯を閉じた。
その千田自身が書き残した「履歴書」を丹念に読み解いたのが本書だ。前半では戊辰(ぼしん)、西南、日清、日露という4つの戦争で数々の戦功を挙げた千田の姿が描かれる。圧巻は、西南戦争において、伝説に包まれた西郷隆盛の首級を発見した経緯である。
金沢の歩兵第7聯隊の聯隊旗手として出陣した千田の「履歴書」に歴史的検証を加え、わかりやすく、淡々と首級発見の経緯が記述される。
なぜ首級の贋物(がんぶつ)説が流布されたのか、また、千田はなぜ首級を発見することができたのか。その理由を、本書はさまざまな角度から検証し、千田の娘婿となった、のちの陸軍大将、今村均(ひとし)の回顧録に出ている千田の証言まで引き、解き明かしている。