私たちの周りに存在する「モノ」は、何か目的を達成するための道具であるという主要素とは別に、人と人を結ぶために働きかけるという機能を併せ持っている。現代における生活のスタイルがいかに多様性に富んでいるとはいえ、他者とコミュニケーションしたいと思う気持ちは本質的に変化しない。むしろ、そうした願望はますます高まっている。だからこそ今、「モノ」の持つ可能性も広がっているのだと考えている。しかし、適切な情報が行き渡るには今しばらくかかるだろう。移動手段の高速化が当たり前となり、インターネットが情報伝達を変革し、人々はこれまでになく巨大な情報に自由に接することができるようになった。これによって、一部の人間が満足を得られるような評価方法や、情報を一元的にコントロールしてきたメディアといった存在だけでは、魅力を届けることが難しくなってしまったからだ。今は過渡期である。多くの人々が、情報に対してより本能的に行動しつつある。つまり、“体感”の重要性がようやく再認識されているのだ。