◆新幹線の実績強調
マレーシアは南シナ海で島々の領有権を中国と争うが、その影響は経済関係には全く及んでいない。「今はダイヤに目がくらんで、他のことが見えない状況だ」と日本の外交筋は嘆く。
日本も手をこまぬいているわけではない。4月にはクアラルンプールで日本政府やJR東日本などが共催する「新幹線シンポジウム」を開催。会場は超満員となり、関心の高さをうかがわせた。講演した国土交通省の山本順三副大臣は中国を念頭に、新幹線の「死亡事故ゼロ」の実績を強調。マハティール元首相が提唱し、日本や韓国の経済成長を見習うルックイースト政策により「両国には強い絆がある」と訴えた。ただ、マレーシアきっての親日家であるマハティール氏はナジブ政権と激しく対立。2月には与党離党を余儀なくされ、国営石油ペトロナスの顧問を解任されるなど政財界への影響力は弱まるばかりだ。(クアラルンプール 共同)
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【用語解説】マレー半島高速鉄道
クアラルンプール-シンガポール間の約350キロを約1時間半で結ぶ高速鉄道の整備計画。世界遺産都市マラッカや、経済開発特区「イスカンダル」があるジョホールバルなどにも停車駅を建設する。日本はJR東日本、三菱重工業、日立製作所、住友商事などが企業連合を結成、受注を目指す。中国や韓国、フランス、ドイツも関心を寄せる。総工費は100億~150億ドル(約1兆678億~1兆6017億円)などと推定。2017年以降に入札が行われるとみられ、完成は22年以降の見通し。(クアラルンプール 共同)