徴兵された最下級の兵では、待遇はさらに悲惨なものとなる。昨年9月、手榴弾を投げる訓練中の暴発事故で右手の手首から先を失ったソン訓練兵(当時20)の母親は、「軍は義手購入費用を800万(約80万円)ウォンしか出せないという。親指と中指、人差し指を動かせる義手は2100万ウォン(約210万円)するのに」と憤った。軍からは「民間病院から軍の病院に移らなければ、診療費や入院費を支援することはできない」と通告されたと訴えた。
2人の負傷者に対する韓国軍の扱いは、日本の感覚で見れば「国家が仕事中に負傷した公務員の治療費をケチるのか」と違和感を抱くが、韓国には韓国の事情がある。
そのひとつは予算不足。そしてもうひとつ、韓国の軍病院は、“仮免医師の練習場”として有名なのだ。
外科が専門外の軍医
朝鮮日報(電子版)によると、2011年時点で韓国軍の軍医官は2100人いるものの、うち96%はインターンを終えたばかりの医師など、現場での治療経験に乏しい新米医師だという。そして彼らはいわゆる“徴兵逃れ”なのだ。
韓国では、男性は徴兵により陸軍下級兵士として約2年間の軍務に着くのが義務となっているが、医師免許を持っている場合は「軍医官」として軍病院に勤務することで、徴兵義務を果たしたことになる制度がある。ここでもエリートたちが特権を得ていたわけだ。