ベトナム原発計画、白紙撤回が正式決定 日本に大きな打撃

 ベトナム国会は22日、日本とロシアの受注が決まっていた初の原発建設計画について、東京電力福島第1原発事故を受けたコスト増加や財政難などを理由に中止する政府決議案を賛成多数で承認した。計画の白紙撤回が正式に決まった。

 原発輸出を成長戦略の一つに位置付ける安倍政権にとって大きな打撃となった。完成すれば東南アジア初の原発となる予定だったが、ベトナム政府は今月10日、計画を中止する決議案を国会に提出していた。

 グエン・タン・ズン前首相の政権下で原発導入計画を積極的に推進し、国会は2009年、中部ニントゥアン省の2カ所に計4基を建設する計画を承認。第1原発(2基)はロシアの受注が決まり、日本は官民一体で売り込みを図り第2原発(2基)の受注が10年に決まった。

 当初の計画では最初の原発が14年に着工、20年に稼働予定だったが、11年の福島第1原発事故後、新たな安全対策が必要となり、計画が先送りされ着工に至っていなかった。国営メディアによると、建設コストは当初の約100億ドル(約1兆1100億円)から約270億ドルに膨れ上がる見通しだった。

 ベトナム共産党内では、政府が多額の債務を抱える中、巨額の国費を投じることへの反対意見が浮上。今年10月の党中央委員会総会は計画を再検討する方針を決め、政府に見直しを指示した。

 白紙撤回による電力不足の恐れについて国会関係者は「計画策定時に想定していたほど経済成長率が高くない」と述べ、原発なしでも当面問題ないとの認識を示した。(ハノイ 共同)