【マニラ=吉村英輝】東南アジア諸国連合(ASEAN)は29日、今年初めての首脳会議を開く。議長国フィリピンのドゥテルテ大統領は、中国による軍事拠点化を念頭に、議長声明に南シナ海問題での「深刻な懸念」の表記を維持させる見通し。米国や日本など国際社会に配慮し、国連海洋法条約を含む国際法による問題解決を重視する姿勢も再確認する方針だ。
産経新聞が入手した議長声明草案では、引き続き中国の名指しを避けつつ、南シナ海での最近の開発行為を批判。「航行と飛行の自由」の重要性にも再言及した。衝突回避へ中国と協議中の法的拘束力を持った「行動規範」策定が、前進しているとも歓迎した。
ただ、今年の議長を務めるドゥテルテ氏は昨年6月の大統領就任後、対中強硬路線から融和姿勢に転換。国連海洋法条約に基づく仲裁裁定は7月、南シナ海における中国の主権主張を全面否定したが、10月の訪中で裁定の「棚上げ」に応じ、引き換えに巨額の経済支援を中国から得た。
さらに南シナ海問題では、中国に近いカンボジアが声明から中国に不利な文言の削除を再三求めるなど、加盟国間の意見の隔たりが大きい。18日の外相会議などを経て、議長声明は修正作業が続けられる見通し。ドゥテルテ氏が、加盟各国の意見をとりまとめ、議長声明の文言を草案通りとするか、注目される。