マクロン氏は「大変な人たらし」　愛読書はボードレールの詩集「悪の華」

　高校時代の級友は、「作家になって、血湧き肉躍る小説を書く」と語っていたと回想する。カントやアリストテレスの哲学書を読みこなし、愛読書はボードレールの詩集「悪の華」。

　出身地は、かつて繊維産業の街だった。安価な中国、東欧製品の流入で工場がつぶれ、「何万もの雇用が失われるのを見てきた」と回想録で述べた。元教師の祖母から仏文学の手ほどきを受け、高校時代は演劇に熱中した。パリ第１０大学で哲学を専攻した後、パリ政治学院、官僚養成校の国立行政学院を卒業。最優秀学生が進む会計検査院に入った。

　その一方、「大変な人たらし」だとある政治家は話す。「敵味方にかかわらず、人の話を聞く。『あなたの意見は重要だ』と思わせ、味方にしてしまう」。経済諮問委員会の委員長を務めたミッテラン元大統領の補佐官、ジャック・アタリ氏の私的な夕食会で、社会党第１書記だったオランド大統領と知り合った。

　役所勤めから４年後、ロスチャイルド系投資銀行に。２０１２年、大統領府補佐官に就くと、企業負担の軽減を訴え、規制緩和へとかじを切らせた。経済相では長距離バスの運行自由化、商店の日曜営業拡大を実現。一連の改革法は「マクロン法」と呼ばれる。

　昨年１１月に大統領選への出馬を表明。オランド氏が支持低迷から再選を断念し、社会党が公認候補をめぐって分裂状態になると、一躍有力候補に躍り出た。　（パリ　三井美奈）