政府が掲げる「貯蓄から資産形成へ」の柱である少額投資非課税制度(NISA)で、2018年以降の非課税投資に必要なマイナンバーの提出が遅れている。税務当局に資産を把握されるのではないかと投資家が警戒しているためだとみられ、証券最大手でも6割程度にとどまっている。口座の大量失効を懸念する業界は提出の呼び掛けを強化している。
NISAは、年間120万円までの株式や投資信託などの投資で売却益や配当益が非課税となる仕組みだ。14年に始まり、16年末の速報値で1069万口座、買い付け額は9兆4756億円に達し、利用者は順調に伸びている。
現時点でマイナンバーを提出した顧客は、最大手の野村証券で6割程度、ネット証券最大手のSBI証券では5割程度だという。提出済みの顧客がさらに少ない金融機関も多いとみられ、業界関係者は「これから頑張らないといけない」(大手ネット証券幹部)と危機感を示している。マイナンバーを9月末までに提出すれば他に手続きは不要。10月以降は税務署が発行する「非課税適用確認書」の交付申請書も必要となる。手続きを終えなければ、18年以降の投資に非課税の恩恵が受けられなくなる。
日本証券業協会の稲野和利会長は「マイナンバーを提出すれば全資産を当局に把握されるのではないかとの誤解もあると聞いている。きちんと説明を重ねたい」と話す。