韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権が、鉄道事業の“独占回帰”にカジを切る。韓国鉄道公社が運行する韓国版新幹線KTXのライバルとして、2016年12月に開業したばかりの水西(スソ)高速鉄道(SRT)の運営会社「SR」を、韓国鉄道公社に統合する検討に入ったのだ。日本の国鉄民営化や、電力小売り自由化を例にあげるまでもなく、公企業の独占体制下では、健全な市場競争に基づく料金値下げやサービス向上などの改善が進みにくい。同様の発想で李明博(イ・ミョンバク)政権、朴槿恵(パク・クネ)政権と議論を重ねて実現した韓国鉄道業界における競争体制。だが、文政権は既得権益を守ろうとする労働貴族らの主張を丸のみし、白紙に戻す構えだ。
労組と協定…独占推進は「公約」
「高速道路や鉄道運賃の改善余地はないか。公共機関を収益性の観点からみる既存の認識を、果敢に転換する必要がある」
文政権で国土交通部長官に起用された金賢美(キム・ヒョンミ)氏は、6月23日の就任演説でこう述べた。料金引き下げを通じた交通機関の公共性強化、という政策方針は、市場原理に基づく自由経済に慣れたわれわれの目から見ると、規制緩和や自由化によるコスト削減やサービス向上策の推進だと思ってしまいがちだ。
しかし、労組の支持で当選した文政権の施策は全く逆だった。韓国紙大手、中央日報やハンギョレは「政府、韓国鉄道公社・SRの統合推進、競争半年で見直し」と相次いで報じた。報道を受けて国土部も6月29日、「鉄道の公共性強化は、大統領の公約であり、国土部は鉄道の公共性を強化するためのさまざまな方策を検討中」と事実上、認める声明を出した。