金融庁、来夏の組織再編で「検査局」廃止 「処分」よりも「育成」に軸足

金融庁の庁舎
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 金融庁が平成30年7月に予定する組織再編の概要が22日、判明した。金融機関の経営の健全性を厳しくチェックしてきた検査局を廃止し、主な業務は監督局に統合。さらに金融行政の司令塔となる「総合政策局」を新設するとともに、制度改正などを担ってきた総務企画局は金融の先進技術化に対応する「企画市場局」に衣替えする。

 金融行政が10年に旧大蔵省から分離して以来の大改革となる。これまでの体制を見直し、変化の激しい金融業界に対応する狙い。必要な予算を30年度概算要求に盛り込む。

 地方銀行など個別の金融機関を点検する検査チームは既に監督局に移った。マネーロンダリング(資金洗浄)やサイバーテロなど専門性の高い検査は、総合政策局に移管する。金融機関が外国債券の運用で、金利の急変動から大規模な損失を抱えた場合も担当する。

 総合政策局は、こうした金融システム全体のリスク管理を徹底するとともに、金融行政の総合的な戦略を立案する司令塔の機能を持たせる。

 企画市場局は、金融とITが融合した先進サービス「フィンテック」に対応するほか、国内証券市場の活性化策の立案などを担う。

 金融庁は、検査官の手引書の「金融検査マニュアル」に替わる新たな検査指針を9月にも公表する見通し。金融機関がリスクを的確に取りながら収益力を強化し、自己資本をどう活用するのかを点検していく。

 これまで金融庁は、バブル崩壊後の不良債権問題に対応するため、金融機関の財務の健全性に力点を置いて「金融処分庁」と揶揄されてきた。今回の組織再編で、対話を通じて金融機関に金融仲介機能を発揮してもらい、日本経済の成長につなげる「金融育成庁」に脱皮したい考えだ。