テレワーク導入の動きは企業ばかりではない。KPIを定め、普及推進の旗振り役である政府の中でも取り組みが進んでいる。電子政府を推進する総務省行政管理局行政情報システム企画課は今年1月、効率的かつ柔軟な働き方を目指して、オフィス環境を抜本的に改修した。
個のパフォーマンスを高め質の高い組織へ
総務省の「行政イノベーション研究会」の報告書によれば、行政の抱える政策課題はますます複雑かつ困難になり高度化している。毎年制定される法令は相当な数にのぼり、日常的な業務の量は増加の一途にある。しかし、厳しい財政事情の下ではより一層に簡素で効率的な組織体制が求められ、各種の業務にふり向ける人的な資源にも制約がある。
こうした課題を克服していくためには、組織のパフォーマンスを向上させて職場を活性化し、職員一人ひとりがこれまで以上に活躍できる少数精鋭かつ質の高い組織の実現が求められている。
紙文化と役職に従った座席配置といった問題点
従来のオフィスにおける問題点は、紙文化が中心の仕事と役職に従った座席の配置、そして会議室を中心とした働き方にあった。まず紙文化においては、会議や打ち合わせ、上司への説明などありとあらゆる業務を紙で行う業務スタイルが根付いていた。そのため、事前に人数分の資料を印刷して配布する手間がかかる上に、意思決定では資料の修正指示を受けてから自席で修正作業を行い、再度説明を実施するなどの煩雑な業務となっていた。
また、座席においても役職順に縦一列の配列なので管理職との距離が遠くて話しかけにくい上、チーム内での距離も離れていることで簡単な情報共有や意思疎通にも支障をきたしていた。会議室を前提とした打ち合わせスタイルであったことも、慢性的な会議室不足による協議の遅れや突発的に発生した打ち合わせなどに機動的に対応できない状況にあった。
情報の電子共有で文書を8割削減

- チームごとのデスク配置
(行政情報システム企画課)
そこで、総務省行政管理局行政情報システム企画課は効率的かつ柔軟な働き方を目指してオフィス環境を抜本的に改修した。改修のポイントは2つ。情報の電子共有によるペーパーレス化と、それによるオフィススペースの有効活用による職員同士のコミュニケーションの活性化だった。
具体的にはフリーアドレス制を導入、チームごとに1つのまとまりとしたデスク配置によりコミュニケーションの増加や意思決定の迅速化を促進した。情報の電子共有を推進した結果、個人周辺の文書の8割が削減された。また、紙のコピーは半減し、用紙やインク、電気代などのコスト削減と印刷やコピーにかかっていた手間も低減した。
実践、他局にも

- パソコンを持ち寄り機動的な打ち合わせが可能になった
オフィスに空間ができたことで打合せスペースが増え、会議室の逼迫状態も解消されてコミュニケーション環境も改善。これらの変革により職員の意識改革や超過勤務の縮減につながり、職員1人あたりの平均残業時間は今年5月の時点で昨年に比べ約3割減ったという。
さらに、個人での集中作業や職員間での気楽な打ち合わせを行うコミュニケーションスペースを設置し、会議では電子ボードなどで画面を共有する効率的な打ち合わせを実現した。
原山幸一郎係長は「まずはやってみることが重要です。まだ改革を実施していない他局ともペーパーレスでやりとりするなど少しずつ動きが広がってきています」と話す。

- 内田洋行
ガバメント事業推進部
芳村友敬氏
総務省からのオフィス改革の要望に対して、ワークスタイル変革事業に取り組む内田洋行では最新のICTを活用した課題解決の提案を行った。同社では2011年から「ChangeWorking自社実践プロジェクト」に取り組んでおり、その実証結果をもとに自治体や企業向けにワークスタイル変革事業を展開している。同社ガバメント事業推進部の芳村友敬氏は「ご要望に対して電子ボード『SMARTBoard』を使ったミーティングや、職員同士のコミュニケーション活性化のための執務空間の提案をしました。弊社の実証ノウハウが発揮でき、高い評価を頂きました。今後も環境の変化や技術の進展に合わせた行政機関の働き方変革に貢献させていただきたいです」と話す。


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