「平均年収は韓国以下」日本人の給料がちっとも上がらない決定的な理由

■低収入層との格差が顕著に

ニューヨーク市マンハッタン在住20年超のジャーナリスト、肥田美佐子氏はこう話す。

「大手テック(IT)企業や金融など成長産業の給料の伸びが目立ち、データサイエンティストなど新しい職種が生まれる一方で、デジタル化の進展により、需要が減少の一途をたどる事務職、旅行代理店業、税務申告作成業、営業、小売り、カスタマーサービスなど、もともと給料が高くない業種の伸びがさらに鈍化し、格差が激しくなっています。高給職は、給料に加えて質の高い医療保険から無料のランチまでさまざまなフリンジベネフィット(福利厚生)が付きますが、低給職はそれも充実していません。連邦法では病休時の有給を義務づける規定がなく、病休すれば無給になる企業もあり、実際の格差はもっと大きいでしょう」

職業別の平均年収を見ると、大学などのコンピュータ科学専門教諭は1085万円、データサイエンティスト・数学関連全般は1143万円、エコノミスト・経済学者は1330万円、弁護士は1638万円、歯科医は2049万円、家庭医は2358万円、外科医は2768万円……。

一方で平均年収が低いのは、旅行代理業513万円、営業関連503万円、簿記・会計・監査事務485万円、カスタマーサービス424万円、交通機関の運転手410万円、小売り店員319万円、調理師全般310万円、ホテル・モーテル受付係296万円……。なお、警察官は770万円、消防士は620万円と比較的高い(米労働省労働統計局2020年5月)。

しかし給料の伸びと同様に物価も上昇している。

■ニューヨークは年収2000万円でも「中流層」

「ニューヨーク州の企業に車で通勤している知人のアメリカ人男性上級マネージャーは、年収が推定12万ドル(1320万円)を超えていますが、教育費や自動車価格の上昇、医療保険料の高騰、そして物価の上昇により『家計が苦しい』とこぼしています。マンハッタンの平均家賃は2008年のリーマンショックの影響で2009~11年に下がりましたが、その後は上がり続け、コロナ禍前の2019年末で3300ドル(36万3000円)です。ニューヨーク市は高額所得者が多く、年収2000万ドル(2200万円)近くても『中流層』に分類されるのです」(肥田氏)

米ピーターソン国際経済研究所によれば、コロナ禍により2020年は失業率が一気に上がったが、今年(2021年)に入ると経済が回復、離職やもともとの人手不足により労働市場が逼迫して、5~7月のわずか3カ月間で名目賃金は2.8%上昇した。しかし物価の上昇を加味すれば実質賃金は下がったという(2021年7月30日付け)。

「都市部では空前の人手不足で賃金がかなり上がりましたが、インフレで食費やガソリン代もどんどん高くなりました。コロナ禍でも経済回復が進むと物価が急激に上昇し、小房にカットされたブロッコリーが一晩で1ドル上がっていたのには驚きました。ニューヨークの一般世帯にとっては、10年前に比べて生活が楽になったという実感はないでしょう。

■上流階級は大きく影響を受けていない

しかしウォール街(金融街)や大手テック企業に勤めるエリート層、または企業幹部になれば話は別です」(肥田氏)

役職別の平均年収を見ると、マネージャー全般(管理職全般)で1391万円、なかでもファイナンシャル(金融)マネージャー1667万円、マーケティングマネージャー1699万円、コンピュータ・情報システム(IT関連)マネージャー1779万円が高い。

「日本と大きく異なるのは、アメリカでは、差別による解雇を除けばほぼ自由に雇用調整できるため、企業の成長に貢献しにくくなった高給のベテラン社員は解雇される一方で、有能な人材は獲得競争になって給料が上がることです。より大きく見れば、日米格差の背景には移民の存在があります。アメリカでも高齢化は進んでいますが、若く有能な移民が、労働力の頭数として経済を支えているだけではなく、シリコンバレーやニューヨークでイノベーションやスタートアップ(起業)を生み出す源泉になっています」(肥田氏)


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