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「報告をしてもしなくても、結局怒られる」日本の大企業の生産性が低くなる根本原因

PRESIDENT Online

なぜ日本の大企業は生産性が低いのか。株式会社ZENTech取締役・慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科研究員の石井遼介さんは「心理的安全性がキーワードになる。たとえば『報告しても怒られる、報告しなくても怒られる』という地獄のような職場では、生産性が高くなるわけがない」という--。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

※本稿は、石井遼介『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

「心理的安全性の高い職場=ヌルい職場」という誤解

「心理的安全性」という言葉は、字面や表面だけを捉えると誤解を生みがちです。心理的安全なチームというのは、外交的であることでも、アットホームな職場のことでも、単に結束したチームのことでも、すぐに妥協する「ヌルい」職場のことでもありません。

例えば、「結束したチーム」はスポーツの文脈で良く語られ、目標に向かって一致団結する姿がチームの理想として認識されています。

しかし裏を返せば、「結束したチーム」は実のところ、異論を唱えることが難しいチームともいえます。心理的に安全なチームはむしろ、チームメンバー大勢の意見が一致しているように見えるときでさえ、「それは違うと思います」と容易に反対意見が言えるチームのことなのです。

「心理的安全性」の誤解の最たるものが「ヌルい職場」といったものではないでしょうか。つまり、人間関係は和気あいあいとしているが、締切も守らず、ストレッチした仕事もせず、コンフォートゾーンの中にいる、といった職場です。

この誤解は「安全」という言葉を日常的な意味でそのまま捉え、「何もしなくても安全」「努力しなくても安全」と解してしまったことに起因します。

しかし、心理的安全性はチームのためや成果のために必要なことを、発言したり、試してみたり、挑戦してみたりしても、安全である(罰を与えられたりしない)ということなのです。

実は、この「ヌルい職場」という誤解を解き、心理的安全性を機能させる上で重要なのが「仕事の基準」(スタンダード)という考え方です。まずこの仕事の基準について解説した上で、「基準」と「心理的安全性」の関わりについて見ていきたいと思います。

目標だけでなく、妥協点を高く設定する

仕事の基準が低いチームは、単純に余裕があって困っていないケースも多くあります。売上の多くを稼ぐ部署が別にあって、期限もなく「なにか新しい事業をつくりたい」といった漠然とした取り組みをしている場合もあるでしょう。あるいは法律や制度に守られていたり、変化が少ない市場の中で大きなシェアを過去数十年持ち続けている。こうした場合、仕事の基準は低くなる傾向にあります。

組織やチームを率いるリーダーが、基準の低い仕事を見つけたら引き上げていかなくてはいけません。メンバー間に蔓延する「まあ、このくらいでいいか」という仕事を見過ごせば、成長を求める優秀な人材は、見切りをつけてしまうでしょう。

それでは、メンバーに示すための「高い基準(ハイ・スタンダード)の仕事」は、どう定義したらよいでしょうか。

「仕事の基準」を高く設定するためには、「目標を高く設定する」ことが大切だと誤解されがちですが、そうではありません。

ビジネスの現実では、人的リソース、設備、資金、そして時間が潤沢に使えるプロジェクトなど、ほとんどありません。100%完璧に行うことなどできない中で、主にプロジェクトの締切・納期がトリガーとなって「妥協」する必要が出てきます。

ハイ・スタンダードとは、この妥協点が高いことを言います。

したがって「来期、100兆円売り上げるぞ!」という高すぎる目標設定をするが、期が始まってしばらくすると「とりあえず、昨対5%増を目標に……」などと、すぐに妥協するリーダーは妥協点が低く、その高い目標にメンバーが共感することもありません。

一方で、「今期、ここまで行こう」ときちんと目標を決めて努力し、あと半年では達成が難しいことが分かっても、粘り強く行動を増やしたり、新しいことを試したり、どんどんとノウハウをメンバーに共有したりするリーダーもいます。

目標を下げて現実に合わせるのではなく、こうした妥協点を高く保ちながら、仕事を進化させていくリーダーに、人は「ハイ・スタンダード」を感じます。そして、ハイ・スタンダードな仕事をするチームのメンバーは、たとえ困難でも達成に貢献しようと努力する一人となるのです。

心理的安全性×仕事の基準の4象限

ここからはエドモンドソン教授の表を元に、著者が整理したマトリクスを使って、「心理的安全性=ヌルい職場」という誤解を紐解くと共に、高い仕事の基準が「心理的安全性」をチームの学習や成果へと結びつける、ということを見ていきたいと思います。

下の表は、「心理的安全性」の高低を上下にとり、そして「仕事の基準」の高低を左右にとったマトリクスです。左上から、反時計回りに見ていきたいと思います。

優秀な人が辞めてしまう「ヌルい職場」

心理的安全性という言葉から、人によっては想像されやすい「ヌルい職場」です。つまり、クオリティの低いアウトプットでも怒られず、納期も厳しくない職場は「心理的安全性は高いが、仕事の基準が低い」時に起きます。ヌルい職場になってしまうのは、心理的安全性が低いためではなく、仕事の基準が低いことが原因です。

心理的安全性は高いので、人々はお互いに意見したり、協力したりします。そして楽しそうに仕事をするのですが、仕事の基準は低いので、納期がただズルズルと伸びていったり、目標未達が続いても特に手を打たなかったりと、「ま、このくらいでいいか」というフレーズが人々の頭に浮かぶ組織・チームです。

このような「コンフォートゾーン」にいるとき、確かに仕事は大変ではないのですが、仕事そのものから得られる充実感はあまり感じられません。成長志向のビジネスパーソンは危機感を覚え、転職を考え始めるかもしれません。


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