最も力を入れたのがシートの開発。国内初の“新幹線版ファーストクラス”として上質さに加え「どんな体型の人が、長時間座っていても疲れない」ことが絶対条件だった。はやぶさのデビューはすでに11年3月と決まっていた。シートの開発は「10年単位」といわれているが、与えられた時間はわずか2年だった。
レカロはベンツやポルシェといった自動車メーカーや、日本航空など航空会社にシートの納入実績がある。JR東が着目したのはレカロの人間工学に基づく最適なシートづくりだった。
ただ、レカロにとって鉄道の客席づくりはこれが初めて。いざ着手してみると、「航空機や自動車のシートとは勝手が違った」(レカロのエンジニアリングダイレクター大島正敏さん)。
ハードルは予想以上に高かった。新幹線のシートは上りと下りで回転させ、向きを変えなくてはいけない。鉄道ならではの条件だ。ダイヤが過密する東京駅では、新幹線は最短12分で折り返す。その場合、車内清掃の時間はたったの7分。清掃員が大急ぎでいすを回転させると、シート周辺に想定以上の負担がかかる。テストを繰り返し、徐々に強度を高めていった。