この経験が、人工乳房以外も手がける転機になった。
「世の中には、医療では解決できずに苦しんでいる患者がたくさんいる。その人たちに『普通の生活』を送ってもらえるよう、なんでも引き受けようと思った」。池山社長はこう振り返る。
そして、医療機関を回る営業マンには口を酸っぱくしてこういう。
「医師から相談を受けた場合、難しそうと思っても絶対に『NO』というな。当社の辞書に『不可能』という言葉はなく、工夫すれば必ずできる」
こうして、形成外科との関係が次第に深くなった。
顧客の感動に自分たちも涙
片脚の膝から下をやけどした女性は、何度皮膚の移植手術をしても、すぐにただれた状態に戻ってしまい、スカートをはくことができなくなった。
池山社長は、ストッキングのように履けるシリコン製の皮膚を考案した。
別の女性は25歳のとき、鼻の軟骨が溶ける病気にかかり、鼻を失った。