そして60年以上が経った現在、西鉄は日本一のバス会社となった。
保有する乗り合いバスは2873台(平成24年度)、年間乗客総数は2億6千万人、年間走行距離は1億5千万キロとなり、地球から太陽までの距離を超えた。運賃収入は485億円となり、西鉄グループの営業収益の14%を占める。
東京23区で営業する都営バスですら年間乗客総数2億1千万人、走行距離4723万キロだと聞けば、いかに西鉄が巨大なバス会社なのかが分かる。
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戦後のバス路線拡充に心血を注いだ楢橋だが、実は昭和17年9月の5社合併前までは鉄道技師だった。合併直前まで九州鉄道のオーナーだった松永安左ヱ門(1875~1971)の命を受け、天神大牟田線の建設を現場指揮したほど「都市間高速電車」の実現に夢を馳(は)せた。
それだけに戦後も天神大牟田線の強化にも力を入れた。鉄道はバスに比べて敷設に資金と時間を要するが、大量輸送力とスピードに優れる。「合わせて沿線開発などを進めれば、北部九州は飛躍的に発展するに違いない」と確信していた楢橋は、単線だった久留米以南の複線化を進め、車両のスピードアップも命じた。26年にはダイヤ改正を断行し、準急・普通電車の運転間隔を30分から25分に短縮させた。