サントリーのチューハイ開発は、次代の荒波にもまれながら前に進化したといえる。
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今から10年以上前、若者のビール離れに頭を痛めていた業界各社はチューハイの新商品開発に活路を見いだした。サントリーは2003年、フルーティーで低カロリーな缶チューハイ「カロリ」を投入、若者や女性の取り込みに成功した。
05年には、極低温の液体窒素で凍結、粉砕した果実を使う「-196℃」を発売。果肉だけでなく果皮のエキスも溶け込んだ“果実の丸ごと感”を前面に打ち出し、さらなる女性層への訴求を図る。
しかし、08年秋のリーマン・ショックでデフレ志向が強まり「進化の方向性に一大転機が訪れた」(井島さん)。
飲酒運転への厳罰化で「外飲み」から「家飲み」への流れも加速。また、特定健診・特定保健指導が始まるなど、メタボリック・シンドローム予防の機運が高まり、アルコール飲料にも「機能性」が求められるようになった。
そんな厳しい環境下でサントリーが放ったのは、マイナス196℃製法の新機軸だった。
09年発売の「ストロングゼロ」はアルコール分が高めの8%で、かつ糖類ゼロ。「1本でもしっかり酔える機能性チューハイ」(井島さん)として、財布の中身とおなか周りが気になる30~40代男性らの人気をさらった。