ディーゼルエンジンを燃焼させるには、点火プラグを使うガソリンエンジンと違い、シリンダー内の混合気を圧縮し燃料(軽油)自体に自己着火を起こさせる必要がある。圧縮比が低すぎると自己着火しないため、マツダのエンジニアは自己着火しない圧縮比の下限を探った。その結果、製品化可能な数字は14と決めた。
寺沢が言うように、ディーゼルエンジンの燃焼の基本は、空気(酸素)と燃料(軽油)をよく混ぜることだ。低圧縮化によって両者の混じり合う時間が長くなり燃焼効率が向上し、排気ガス中のNOxとPMの発生も減少する。その結果、マツダは、NOxの浄化装置の廃止に成功した。これによって、他社のディーゼルエンジンに必要な浄化装置の維持が不要となり、エンジン重量の軽量化にも寄与、さらにはコストダウンにも貢献するというさまざまな効果が生まれた。(図1参照)
低圧縮化はエンジンの重量を軽くできる
排気ガス浄化に大きな効果を発揮する低圧縮化を狙うのはひとつの考え方だとしても、出力の向上を図ろうとする高圧縮化と比較すると、乗用車としての商品性に直結する動力性能が不利になる可能性を否定できない、というのがこれまでの常識だ。
「しかし」と寺沢は続ける。