
高圧縮比と低圧縮比のディーゼルエンジンの比較(図1)【拡大】
「高圧縮の場合、爆発燃焼させる時機を上死点から少し遅らせなければならず、そうなると低圧縮の場合と比較して必ずしも熱効率が高いとは言えないのです」
高圧縮の場合、上死点(ピストンが往復するときの最上位置)付近で燃料を噴射すると、燃焼の速度が速いために空気と燃料がムラなく混じる前に自己着火を起こす。
つまりこの場合、必ずしも燃焼効率がよくないのだ。したがって、混合気が均一に混じる時間を稼ぐために、ピストンが上死点から少し下がったところに来るまで着火する時機を遅らせるのが一般的な手法になっている。逆に表現すれば、設計図上の圧縮比は高くても、実際に燃焼エネルギーが発生する膨張のプロセスがこの圧縮のプロセスと同一ではないことになる。
つまり、気筒内部の圧縮の比率(一般的には16から18)が、実際にエネルギーを発生させる膨張比と一致しない。膨張比の値は設計上の圧縮比の値よりも小さくなる。したがってその分、期待できる熱効率は低下する。