
3月24日、ニューヨーク国際自動車ショーで、マツダの「ロードスター」が「2016年世界カー・オブ・ザ・イヤー」とデザイン部門の「世界カーデザイン・オブ・ザ・イヤー」を同時受賞という史上初の快挙を成し遂げた。【拡大】
しかも、もともとはロードスターの個性とされた“人馬一体”が、しだいにマツダが掲げたZoom-Zoomという走りを印象づけるキャッチフレーズと融合し、マツダ車共通の個性として定着し始めていた事実が、強く彼らの背中を押していた。
「エンジンは1.5Lのみ、と決められたことがよかった」と中山は振り返ってくれた。
エンジンの排気量が決まった瞬間、タイヤ+ホイールのサイズ、ホイールベース(前車軸と後車軸の間の長さ)の上限が決まる。ボディーの大きさにも制約ができる。具体的にはホイール径は16インチ、ホイールベースは2300ミリ前後、車体の全長は4メートルまで。車重は1トン以下。結果として、エンジンの排気量の1.5Lはこれまでで最小、全長も最短の3915ミリ(従来最短だったNAより55ミリ短い)におさえられた。中山に言わせれば、この制約があったおかげで新しいロードスターのデザインが完成した、という。
通常、セダンやワゴン、SUVといった乗用車には屋根があり、中に乗っている人間は外からながめる人の目にはほとんど入ってこない、つまり意識されない。したがって、乗員の“見た目”がクルマのデザインに大きく影響することはない。しかし金属製の屋根のないオープンカーの場合、人間の体がいわば“むき出し”になるために、人間の姿そのものもデザインの一部にならざるを得ない。と言うよりむしろ、見た目の人間の姿をその一部として溶け込ませてはじめて、オープンカーのデザインは完成する。人間もそのデザインの重要な要素なのだ。
(文中敬称略)
(ジャーナリスト 宮本喜一=文)(PRESIDENT Online)