検証結果では、今年36歳になる世代が年金を受け取り始める平成55年度に所得代替率は50・6%(経済が標準的に成長するケース)で下げ止まる。だが、基礎年金の所得代替率は26%。5年前から「基礎年金の水準が低い」との指摘はあったが、さらに割り込んだ。現在の生活水準に照らすと、満額で1人月額4・5万円(現在は6・5万円)を意味する。実際に受け取る際には物価や賃金の上昇を反映するため、額面はもっと高くなる。だが、物価も賃金も今の水準にみなすと、この数値。基礎年金だけで暮らす世帯を考えると、ダメージが大きい。
基礎年金の水準低下は5年前の財政検証の際に兆しがあったが、改革は手つかずになった。痛みを伴う改革を、厚労省も政治家も国民も回避したかったことが大きい。
若い世代の年金にダメージが出たのと裏腹に、今年65歳を迎える世代の年金水準は62・7%となった。この数値は、実は5年前の年金水準よりも高い。現役世代の賃金に対する年金の価値が5年前よりも高くなったことを意味する。デフレ下で賃金が低下する一方で、年金は賃金ほど下がらなかったためだ。
現役世代が減る中、保険料負担が過大になることから、年金は水準を抑制する方向。だが、現実には上昇したもので、年金部会の委員からは「高止まりした給付水準を早く見直してほしい」と注文がついた。