■改革案、改善見込めるが実現は不透明
厳しい結果を踏まえ、改革の方向が問われる。ただ、先行きは険しい。まず、試算の前提になった指標が本当にこの形で推移するのかが危ぶまれる。
例えば、試算の前提では女性や高齢者の労働参加が進むことを織り込んだ。女性が出産後に離職して労働参加が落ち込む「M字カーブ」も解消すると見込む。
だが、年金部会ではこんな声も出た。「試算はM字カーブが改善され、ほとんど台形になる前提だが、これを変えるには、日本社会の考え方そのものを変えていくようなメッセージが必要。ちょっと保育園を増やすとか、学童保育を増やすとかいうことでは済まない」
年金の水準低下を食い止める改革案と試算が示されたが、厚生労働省自身が「いずれもハードルは高い」と漏らす。
1つ目は、物価や賃金の伸びが低い場合でも年金の引き下げが発動されるよう、「マクロ経済スライド」を強化すること。実施すると、経済が低成長で推移した場合でも、5%程度の所得代替率の改善が見込まれる。額面が減るため、強い抵抗が予想されるが、これから年金を受け取る世代だけでなく、唯一、受給世代も痛みを分かち合う案だ。