「戦前日本SF映画創世記」【拡大】
愛知の大仏が突然、立ち上がり、名古屋の観光地を巡る『大仏廻国・中京篇(へん)』は、日本初のミニチュア着ぐるみ特撮ものとされるが、当時、見た筒井康隆に取材しているのは貴重だ。『キング・コング』の便乗作で、キング・コングの着ぐるみに入った男が街でドタバタを演じる『和製キング・コング』を撮った斎藤寅次郎は『西部戦線異状なし』のパロディーで、すべてがさかさまな世界を描いた『全部精神異常あり』を作っているが、その不条理でナンセンスな笑いには唖然(あぜん)とさせられる。
一方、名匠木村荘十二(そとじ)が監督した未来予測の時間SFをテーマとする『都会の怪異 七時〇三分』は、都会派モダンホラーの先駆的な作品として高い評価が与えられている。
本書で俎上(そじょう)に載せられた作品の大半はフィルムが存在しない。だが、著者が舌舐(な)めずりせんばかりの愛着を込めて語っている、これらの幻のSF映画は、無限のセンス・オブ・ワンダーをかきたてずにはおかない魅力に溢れているのだ。(河出書房新社・本体2500円+税)
評・高崎俊夫(編集者)