【書評】『遊動論 柳田国男と山人』柄谷行人著 (1/2ページ)

2014.6.1 10:44

『遊動論』

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 ■いま最も必要な「倫理」

 生きにくさとは、存在することの「縮小感」なのだ、こう主張することで柄谷行人は登場した。

 夏目漱石に、人間存在の居心地の悪さを聞き取る-これが文壇に乗りこむ際の、唯一の武器だった。感受性に批評のすべてを賭けた江藤淳を、この瞬間、まちがいなく氏は受け継いだ。

 柄谷氏も江藤も、まずは「挫折」から始まっている。つまり眼前の秩序や世界は崩れ去り、何一つ自明なものがない場所から出発する。以後、彼らは、この生きにくさを克服する方法を求めて、別々の道を歩んだ。

 江藤は「国家」とのつながりを、柄谷氏は閉塞(へいそく)感から脱出する「外部」を求めて、言葉をつくりあげていった。

 一見、彼らは対立したようにも見える。だがそれはまちがいだ。2人はつねに、あるべき社会関係を、他者とのかかわり方を、つまりは「倫理」を問いつづけてきたからだ。

 だとすれば、柄谷氏の作品は、震災後のいまこそ読まれるべきではないか。陳腐な「戦後批判」が飛び交い、思いつきの変革が叫ばれている。だがそれは、崩壊した現実に「観念」の蓋をしているだけだ。

正当な評価を受けず挫折しつづけた柳田国男

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