「戦前日本SF映画創世記」【拡大】
■独自の進化を遂げた奇想
今年は『ゴジラ』が誕生して60年を迎え、近々、2度目のハリウッドのリメーク版『GODZILLA』も公開されるが、本書は、この日本が世界に誇る特撮映画のルーツを戦前の日本映画の中に探ろうとする試みである。
著者は〈SF的想像力〉をキーワードにしてさまざまな文献を渉猟し、その始原は衣笠貞之助の『狂った一頁』と断定する。その論拠として撮影助手に後に『ゴジラ』で一躍名声を得る特撮の神様、円谷英二がいたことを挙げているが、円谷の戦前の仕事を追跡するのは趣旨ではない。
本書の読みどころは、むしろ今や忘れ去られてしまった弱小プロダクションがつくった低予算のB級娯楽映画のなかに、日本独自の進化を遂げた奇想の系譜を発掘したことにある。たとえば大都映画の日本初のロボットSF『怪電波殺人光線』や、江戸時代を舞台にロボットと侍がチャンバラを繰り広げる極東キネマのロボット時代劇『無敵三剣士』は、そのあまりに稚気溢(あふ)れるチープなスチル写真を眺めるだけで愉(たの)しくなる。