映画ファンならご存じであろう。そう、小津安二郎監督の世界的名作『東京物語』で笠智衆(りゅうちしゅう)が演じた、枯れた老主人公の名前である。これは筆名(ペンネーム)に間違いない。本名ならば担当編集者が逆に筆名を勧めるにちがいないからだ。
本書で「小津」は終盤、意味ありげに登場する。だが、分量としては300ページ近い大著の1ページ弱である。また、その内容も謎解きの材料になるとはとても思えない。
この気鋭の著者による昭和史の発掘は本書にとどまることはないだろう。次作にも大いに期待する。同時にそれが「なぜ平山周吉が歴史を書かねばならぬのか」という謎に迫る書であることにも。(新潮選書・本体1400円+税)
評・関厚夫(編集局編集委員)